【私の県議会での質問。卒業式の歌「旅立ちの日に」の作詞者を讃えよ】

町の至る所で“卒業式”が挙行された、または挙行されるはずだ。
一昨日、柳瀬ゴロー氏がFacebook上に「埼玉県発祥の有名な卒業式の歌「旅立ちの日に」を作詞された、故・小嶋登先生に『彩の国特別功労賞』が贈られたのは、浅野目さんの質問がきっかけ」と書いてくださっていた。
懐かしさで一杯になったのとともに、よくぞ憶えていてくださっていたと驚き感激した。

ちょうど10年前、平成23年2月28日の質問。
私の埼玉県議会での質問全文だ。

「旅立ちの日に」という歌を御存じでしょうか。20年前の平成3年に、埼玉県秩父市立影森中学校の校長先生によって作詞された合唱曲です。この歌は、近年では卒業式ソングの定番としてとても有名です。平成19年には、NTT東日本フレッツ光のテレビCM曲としてSMAPが歌いました。平成21年には、東京ディズニーシーのCMソングとしても使われています。ですから、「白い光の中に♪」で始まるこの歌を聞き覚えのある人は多いと思います。

しかし、何といっても、先ほど申し上げましたが、卒業式の歌として余りにも有名。テレビ局が全国三百校を調査した「卒業式に歌う歌は」によれば、「仰げば尊し」が58校で、「大地讃頌」が58校で、「蛍の光」が51校で、そしてこの「旅立ちの日に」が161校で歌われており、断トツの一番。今、最も広く歌われています。全国の六割の学校で歌われていることになるのです。
また、これは全国の中学生が使用している音楽の教科書です。音楽の教科書として発行しているのは、全国で教育芸術社と教育出版の二社だけですが、いずれの教科書にもこの「旅立ちの日に」が掲載されています。埼玉県内の全ての中学生、いや、全国の全ての中学生がこの歌を第二学年から第三学年において学んでいるということになります。

この歌が誕生した影森中学校は、当時の日本の少なくない学校がそうであったように困難校であったようです。小嶋先生は、「赴任したときに聴いた生徒の歌う校歌は、余りにも声が小さかった」と、後日、本の中で述べられています。様々な問題を抱え、卒業式自体も生徒がきちんと参加しないような状況で、かなり荒れた学校だったようです。

しかし、この学校の立て直しに音楽の力を信じたのが小嶋先生でした。教育目標に「歌声の響く学校」を掲げ、著名な詩人でもプロの作詞家でもない、当時の校長であった小嶋登先生が作詞されました。この歌の初演は三年生を送る会、この会で教職員たちから卒業生に向けて、心を込めて、たった一度だけ歌われるサプライズ曲のはずだったそうです。一番は小嶋先生が一人で、二番は教師全員が歌いました。生徒はどんなに驚いたことでしょうか。しかし、生徒の歌声も加わり、学校全体が「旅立ちの日に」で包まれたそうです。中には、泣きながら歌っていた生徒もいたといいます。
小嶋先生は、混乱し萎縮した教育現場においても音楽の力は何かを変える、とんでもない力を秘めていることを知っていたのです。小嶋先生の思いに脱帽せざるを得ません。

自ら一人で卒業生に優しい声で歌った当時の小嶋先生の姿が、ユーチューブにもアップされています。私も見ましたが、見ていると、本当に先生が子供たちを大切に愛していたのかがよく分かります。
この歌に生徒が強く感動し、生徒がまとまり、学校がまとまっていきました。三年生を送る会だけに歌われる予定だった歌が、翌年から生徒たちが歌うようになりました。そして、今度は生徒から生徒へ代々歌い継がれていきました。そしてまた、影森中学校だけの歌だったのに、同校にとどまらず周辺の学校に伝わり、そのうち地域を越えて、平成10年頃までには全国の学校で歌われるようになったのです。知事のよく使っていらっしゃる言葉を借りるなら、正にムーブメントを起こしたわけです。

しかし、今年の1月20日、その小嶋登先生が急性心筋梗塞により天界に去られました。80歳でございました。亡くなられた三週間後の2月12日放送の「題名のない音楽会」では、時節柄だからか、卒業式の定番曲ベストテンが放映されました。生前に録画されていたからでしょうか、小嶋さんは1月20日に御逝去されました旨の字幕スーパーが流されていましたが、そこには「旅立ちの日に」の作詞家の小嶋先生が出演をされていました。

秩父市は、功績を称え、作詞作曲した先生方二人に、ふるさと文化賞を贈っていらっしゃいます。小嶋先生が天界に去られてから一か月余りがたちました。しかし、なぜでしょう、埼玉県にも県教育委員会にも先生の偉大な功績を称え顕彰する動きがありません。そんな矢先、政府は2月15日の閣議で、陛下の名前で従六位瑞宝双光章を贈ることを決めました。しかし、それでも埼玉県も県教育委員会にも全く動きがありません。私はとても残念なことだと思っています。小嶋先生の功績は無視されてよいのでしょうか。良いはずはないと思います。是非、小嶋先生の遺徳と偉業を顕彰していただきたい。知事と教育長から答弁ください。

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