埼玉県スクールカウンセラーの採用改善について
日本学校心理士会埼玉支部副支部長 新井邦二郎
平成7年開始の旧文部省委託事業(平成13年から補助金事業)である各都道府県・政令都市のスクールカウンセラーに、臨床心理士と同様に学校心理士を採用して欲しいとの願いは、平成9年の学校心理士認定の開始以来、学校心理士資格者の誰もがずっと抱き続けてきたものです。当初から長い年数、学校心理士は、このスクールカウンセラー事業から全くと言ってよいほど除外されてきました。しかし、社会的評価の徐々に高まる学校心理士などを無視することもできなくなり、平成21年に文部科学省は臨床心理士や大学教員、医師以外の資格者を「スクールカウンセラーに準ずる者」(準スクールカウンセラー)として採用できる道を開きました。これは、学校心理士にとって確実に一歩前進でした。しかし、その後まだ都道府県によっては「準スクールカウンセラー」の採用に門を閉ざすところが多く、また採用があっても臨床心理士などの「正規スクールカウンセラー」に比べ「準スクールカウンセラー」の報酬金額は低く抑えられています。時給比較すると、多くのところで「正規スクールカウンセラー」は5000円代で「準スクールカウンセラー」は3000円代。なかには青森県のように正規が6000円で準が2900円のように半額以下のところもあります(平成25年実績)。
埼玉県はお隣の東京都と並んで、これまでスクールカウンセラーは臨床心理士のみを採用し学校心理士などの資格者にはいっさい採用の門を閉ざしてきました。このような状況を改善すべく、本年の6月に埼玉県議会で次のようなやりとりが有りました。
【浅野目義英議員(民主・無所属)の質疑質問】(一部抜粋)
・財務省の調査票によれば、スクールカウンセラーの配置校における問題行動の減少率は、未配置校のそれを若干上回っているものの、「今後はさらに大きな成果を上げていくための方策を検討することが課題」とあります。また、興味深いことですが、「スクールカウンセラーに準ずる者を多く活用している自治体において、大きな事業成果を上げている例がみられる」と言い切られています。加えて、平成23年2月3日に文部科学省初等中等教育局児童生徒課長から都道府県指導事務主管課長へ発せられた文書には、「幅広い人材の活用や配置等を行えることになっており、事業計画書などの提出に当たっては、その趣旨を踏まえ、スクールカウンセラーに準ずる者についても積極的な活用を願います」とあります。
財務省も文部科学省も、(1)の臨床心理士さんのみを採用している実態への警鐘を鳴らし、(1)のみの選考では効果があまり上がらないと述べ、(2)のスクールカウンセラーに準ずる者の採用と活用を促しています。生徒、児童の心の課題を解決するための専門家は、実はたくさんいらっしゃいます。学校カウンセラー、学校心理士、キャリアカウンセラー、教育カウンセラー、認定カウンセラー、臨床発達心理士などです。そもそもスクールカウンセラーは、何のためにいるかをよく考えるべきです。
虐待、貧困、いじめ、学力不振などで誰にも話せず、光を求め、心に苦しみを抱いている生徒、児童が今多くいます。心の扉を開いてあげられる、抽象的に言えば、その子に寄り添い励まし、行く手を示してあげられる人物が採用されなければならないはずです。本当に重要な仕事です。困難な状況に立ち向かい、確実な成果を上げるために、一つの団体の資格者だけに独占させず、さまざまな資格者の総合力で対応すべきと考えますがいかがでしょうか、教育長からの答弁をいただきたいと思います。