「茶谷って、だれだ」「薬害エイズで評判の悪い厚生省の官僚では、若い人の票が集まらん」

衆院埼玉六区の公認候補をめぐる自民党上尾支部の話し合いは、
厳しい雰囲気で始まった。七月下旬のことだ。

のちに特別養護老人ホーム建設をめぐる収賄容疑で逮捕される厚生省の茶谷滋元課長補佐(三九)と、
浅野目義英・上尾市議会議長(三八)。名乗りをあげた二人を対象にした調整はこの会合から本格化した。
「知名度を考えれば有利」。浅野目氏はそう読んだが、展開は違った。

相談にいった福永信彦氏ら地元の自民党国会議員らからは一様に、
「六区の票の半分は上尾市だ。市長の支援を取り付けて来い」と説かれた。
小選挙区制で狭くなった分、地元の首長が重みを増す。
しかし、新井弘治市長は浅野目氏に、「選挙をやる体力があるのか」とそっけなかった。

新井市長は実は、有力県議を通じて自民党国会議員らに、
「意中の人物」として茶谷容疑者の名前を伝えていた。
上尾市には茶谷容疑者への収賄容疑で逮捕された
小山博史容疑者(五一)のグループの複合福祉施設が完成間近になっていた。

2週間で公認調整
「茶谷さんが埼玉県の課長に出向していたころ、市長が関係している福祉施設の認可で骨を折ってくれた。
『いい人だ』と市長は言っている」そんな説明を県議から聞いた、

ある国会議員は「市長が世話になっているなら強い。厚生省関係の団体の支援も得られる」と思った。

岡光序治厚生省事務次官(当時)に確かめると、「よろしくお願いします」という答えが返ってきた。
調整劇は二週間で幕が下りる。八月上旬、公認は茶谷氏に決まった。
十月の選挙本番では、厚生省に関係が深い医師会、薬剤師会の動きがめざましかったといわれる。