国の補助金を受けた企業からの政治献金問題は、発端となった西川公也農林水産大臣の辞任で収束するどころか、上川陽子法務大臣や望月義夫環境大臣にも飛び火し、3月3日には安倍晋三首相のケースも発覚した。民主党の後藤祐一衆院議員が予算委員会で指摘した通り「金まみれ内閣」と呼ぶのがぴったりだが、安倍首相は反省するどころか、「少し言葉には気をつけた方がいい。とんでもない決めつけだ」と“逆ギレ”で、自身への疑惑も「補助金を受けていることを知らなかったので違法性はない」と開き直った。企業・団体献金の違法性に対する認識が欠如しているのではないか。

6日の衆院予算委員会で塩川鉄也衆院議員(共産)は、前回の参院選前に大手ゼネコンでつくる「日本建設業連合会」に自民党が4億7100円の献金要請した文書を示した上で「企業が政治に金を出せば“投資”に見合う“見返り”を政治に要求することは避けられない。だから企業献金は本質的にワイロ性をもつ」と追及した。

端的に言えばギブ・アンド・テイクの関係だ。自民党は建設業界から政治献金を受け取り、公共事業をばら撒く土建政治を得意としてきた。そして安倍政権もこの“金権腐敗政治”を継承した。実際、自民党の献金要請を受け大林組や大成建設、清水建設や鹿島建設はいずれも1200万円を献金しており、安倍政権はその恩返しのように、入札不調が相次いでも「国土強靱化」の旗を降ろさず、高速道路や防潮堤など“大型公共事業バラマキ”を続けている。同党の政治体質を追及してきた立花隆氏も『田中角栄研究 全記録』(講談社)で「企業は営利を目的とする以上、見返りのない献金は絶対にしない。その意味で、政治献金はすべて汚職まがいか恐喝まがいのものであるといってよい」と指摘している。

また、租税特別措置では適用企業が補助金と同じ恩恵を受ける。法人税などを減免されるが、こちらは企業名の公表さえ義務づけられていない。

【“埼玉方式”の連鎖なるか】

この情勢下、野党は結束して攻勢を強めようとしている。民主党と維新の党は6日、幹事長・国会対策委員長会談を開催し、政治資金規正法改正を目指す協議会を設けることを決め、企業・団体献金禁止に賛成の共産党や社民党にも呼びかけることになった。

枝野幸男幹事長(民主)は「違反企業への罰則強化などから規制強化をした上で、企業・団体献金の全面禁止を目指す」との二段階の改正案を提示。これに対し、すでに禁止を掲げている維新の党は「一気に全面禁止すべき」との考えを示した。協議会で改正プロセスを詰めると見られるが、全面禁止の目標(方向性)は共通する。

地方でも野党共闘で自民党に対抗する動きがある。埼玉県の浦和市内で7日、浅野目義英・埼玉県議(民主)の県政報告会に上田清司知事が駆け付け、実質的な支持表明をした。浅野目県議は1カ月50万円の政務調査費の情報公開(領収書公開)をいち早く実践した改革派県議だ。県政ウォッチャーはこう話す。

「これまで上田知事は県議会第一党の自民党と友好的な関係でしたが、議会改革や行財政改革に消極的で横暴な自民党県議団に堪忍袋の緒を切らし、非自民県議を増やすと決別宣言をしたのです」

2月13日、政治団体「プロジェクト・せんたく」(代表は「刷新の会」鈴木正人県議)の結成会見が開かれた。議会改革や脱原発などの「せんたく」の政策に賛同する県議選候補者を上田知事が応援し、非自民勢力を増やすのが狙いだ。上田知事が浅野目県議を支持表明したのはこの一環と言える。

この“埼玉方式”が連鎖し、中央と地方で野党共闘が次々と成立する可能性もある。「政務調査費の情報公開」は維新の会が訴える重要政策で、「脱原発」も安倍政権との対決姿勢を明確化する“旗印”になる。統一地方選で自民党に激震が走るのかが注目される。

(横田一・ジャーナリスト、3月13日号)