<総括質疑> 平成28322日(火)

 1 先端産業プロジェクトについて

 (1)プロジェクトの全容について

 (2)事業スパンについて

 (3)リスクについて

 2 高齢者が近未来社会を共に担うシニア革命について

 (1)生産年齢人口が大幅に減少することについて

 (2)シニア革命について

 3 ウーマノミクスプロジェクトについて

 (1)プロジェクトの成果について

 (2)プロジェクトの今後について

 4 いわゆる「自主避難者」への支援について

 (1)県内に避難している被災者支援について

浅野目義英委員 

 それでは、民主・無所属の会の浅野目ですが、全て知事に対して総括質疑をさせていただきます。

 超高齢社会を迎えます。いわゆる2025年問題の解決への挑戦がなければ、我が国並びに我が県の衰退は明白です。活力を高めていくための政策的戦略が不可欠であると当然のように思っています。

 高度経済成長を支えた既存産業のみならず、新分野での成長を満たしていく産業を育てることが重要です。政府、自治体、それぞれ長い歴史、投資と回収の有効事例は山のようにあります。戦後の復興金融金庫債はじめです。埼玉県だけこの場に至り手をこまねいて何もしない、後世の圧倒的な批判を受ける、厳しい歴史の審判を受けることを私は良しとしません。

 埼玉県の産業は圧倒的に中小零細企業によって形成されています。しかし、新分野に挑戦するための投資を彼らは持っていません。埼玉県成長のためのチャレンジスピリットを誘発するこの事業の基本的認識について知事に伺いたいと思います。

◎知事 

 99.9%の中小企業の存在がございましたので、まずは金融がうまく流れることだということで、制度融資の改革をやりました。当時、四、五年ほど1,000億円のレベルでしたが、一気に3,000億円に上がりましたので、この貸出残高の伸び率は平成16年と17年は2年連続1位になりました。その前は37位でした。そしてまた、ここ12年間の資金の金融機関の貸出し増加量は東京都に次いで2番目です。伸び率は東京よりも上です。そういう状況と、そして創業ベンチャー支援センター、これは大体300万円から七、八百万ぐらいの方々が多かったんですが、売り上げが。これはもう33社の人たちが1億円以上の売上げになっております。しかし、やはりITだとかサービス業だとか、なかなか製造業みたいに大きく人を雇用したり、あるいは税収を大きく上げたりするようなところまで行っていませんでした。

 そういうことで、2025年問題も含め、これからの日本の産業を見ていますと、かつては自動車、電機、電子、精密機械ということで4つぐらい柱がありましたが、今や自動車のみという状況になっていますので、まさしくナノカーボンをはじめいろんな先端産業が必要だということで、そうした部分をあえて埼玉県でも集積させていって、その中から、中小企業といえども一気に何らかの形で大きく飛躍していただきたいという形で先端産業プロジェクトを設けたところでございます。

浅野目義英委員 

 きちんと投資をして、きちっと回収していくためには、研究開発、それから法規制対応、また販売ルートの開拓など、トータルでの取組が必要だと思います。また、蓄積された技術やノウハウというのは、次のステージにつながる貴重な財産として将来の成長に直結しています。いわば、短期的な視点だけでは結果が出たか出ないかと捉えることは、なかなかできないのかなと思います。

 また、責任がとれるのかという話は、論点違いのように思います。知事としては、この先端産業創造プロジェクトの投資と……

    〔何事か言う人あり〕

浅野目義英委員 

 私が質問しています、静かにしてください。投資と回収の時間軸をどのように捉えているのか、答えてください。

◎知事 

 先ほども各議員からの質疑でもお答えしましたように、1つの企業が開発する技術や製品というのは多くの人たちが関わっているわけでありますので、また埼玉県としてもできるだけ多くの方を関わらせようという努力をしております。例えば産総研に関わっていただく、NEDOに関わっていただく、金融機関に関わっていただく。そうすることで、県としてのリスクも減らそうとしていますので、この事業のサイクルというのはある程度は見ております。例えば、二、三年で何となくめどが立つか立たないかということを見ていく。全く立ちもしないところにつぎ込んだりはもうしない。場合によっては中止ということになってきます。

 それが製品化されるやつも具体的にいろいろ違ってきます。例えば医師が裸眼で見ることができる3D内視鏡、もう本当に立体で見えちゃうんです。これはある企業が開発しました。もちろん、それ以前からの開発の状況の中に県の今回の先端産業プロジェクトの投資が入っています。これはもうすぐ製品化されそうです。あるいは、比較的県と単独の企業との共同作業ですが、マグネシウム電池も、これはやっぱり3年ぐらい製品化には時間がかかるだろうというふうに思っております。例えば、これは単体でやっているところですけれども、発熱シートなどはもうすぐにでも製品化できそうな感じがいたします。

 物によっていろいろありますので、サイクルを全て一律的にはなかなかできない。ただ、二、三年ぐらいでめどをつけて5年ぐらいで何らかの形で形を見せて、それでその後製品化も早くできるものと若干時間がかかるものという感じでありますので、トータルで見ていけば七、八年から10年ぐらいのサイクルになってくるんではないかというふうにざくっと理解しております。

浅野目義英委員 

 知事、その正にリスクなんですけれども、この先端産業創造プロジェクトの投資リスクを軽減させて、回収を最大限にさせるための効果的な手法、そして留意点、教えてください。

◎知事 

 やはり、基本的には多くの方々に関与していただくというのがリスクをヘッジさせることだというふうに思っています。御案内のとおり、産総研とNEDOとの三者協定がございます。埼玉県独自の目利き人もいますが、産総研なんかの目利き人を活用したいと思いますし、また埼玉県の先端産業研究サロンのメンバーは相当なレベルの方たちに集まっていただいて、アドバイスをお願いをしております。こうして二重のチェックをかけて、その上に金融機関の協力もしていただくという形になっておりますので、金融機関は今度は、いわゆる研究のレベルもそうですが、会社内のお金の流れだとかキャッシュフローの流れだとか、そういったところもやはり評価されるというふうに思いますので、そういう形でチェックをすることで、企業としての中身がしっかりしているかどうか、その上に技術がしっかりしているかどうか、そうした形を確認した上で投資をするということになっておりますので、そういう意味でのリスクを減らす努力はやっているつもりでございます。

浅野目義英委員 

 残時間が15分になってしまいましたので、もうとんとんと行きたいと思います。

 次は、高齢者が近未来をともに担うシニア革命についてですが、2025年には生産年齢人口大幅減少、団塊の世代が後期高齢者になること、参集している委員そして県庁職員、既に御認識のとおりです。知事の認識について、1分程度でお願いします。

◎知事 

 基本的には、いわゆる騎馬戦型社会それから肩車社会という形で、暗いイメージで高齢化社会を捉えている傾向がございました。特に肩車は1人で1人を支える。両方とも涙顔です、漫画で見ると。それはおかしいと。10人のうち8人が基本的に入院・通院などしておられない比較的元気な方々だと。であれば、もっと明るい社会があるはずだというのが基本の発想にあります。そこからスタートしております。

浅野目義英委員 

 このシニア革命を強力に推進されるというふうに意思表示されています。賛意を示した質疑もあり、また疑問を呈した質疑もありましたけれども、施策については様々なところで類例が出ていますからいいんですけれども、底流に流れているこのシニア革命を強力に推進するという意思表示について、やはり1分でお願いします。

◎知事 

 今申し上げましたように、社会を支える人たちが少なくなってくる、そして支えられる人たちが多くなってくるという社会が間近に迫っているというところに悲観論がありますので、むしろ、社会を担う人たちが高齢者の中に10人のうち8人可能性としてある。その可能性があれば、その可能性の部分をより現実的にしていくことが大事だということが私の認識であります。

浅野目義英委員 

 ウーマノミクスプロジェクトに移ります。

 埼玉版ウーマノミクスプロジェクトは、埼玉県の三大プロジェクトとして非常に衝迫力の持った施策でした。平成24年から国に先駆けて取組をしたことは記憶に新しいところです。仕事と子育てを両立しやすい企業として認定された多様な働き方実践企業は、当初4年間の目標の2,000社を今年度末には達成する見込みだと伺っています。

 私は、重大な成果が数々上がっているものと認識していますが、知事、この4年間の手応えについてどのように認識していますか。

◎知事 

 一番すごいなと思ったのは、グーグルで検索すると、このウーマノミクスに関しては1番目と2番目が埼玉県のプロジェクトについての説明が出ているということであります。また、先般、日経新聞で埼玉県は本気だという形で紙面の半分ぐらいを使って紹介がありました。まさしく日経新聞の全国版で埼玉県のウーマノミクスプロジェクトを取り上げていただいている。こうした部分も埼玉県の成果を一定程度評価していただいている、こんなふうに思っておりますし、数字の中でも明らかになっています。まさしく労働力調査の中でも平成22年から27年にかけて本県の15歳から64歳までの女性の就業率は5.3%に増加しておりますが、全国の増加率1.9%ですので、約3倍という形になっております。

 そういう意味でも、やはり雰囲気として埼玉県下の企業で女性を大事にしよう、女性の働く場として、子育て支援も含めたワークライフバランスについても重要視している、そういう空気が流れておりますが、実態としても数字の上でも明らかになってきている、こんなふうに理解をしております。

浅野目義英委員 

 ありがとうございます。

 埼玉県は、出産を機に離職する女性が非常に多かったですよね。30代女性の離職率は全国42位だった。一方、就業希望率というのは全国で4位だったんですね。この深刻なマッチングミスの状況を脱却した実績というのは、これは高く評価されるものだと思います。

 さて、次なるステップとして、平成28年からはどのような取組をしていくのか答弁してほしいと思います。

◎知事 

 これまでの流れを加速化するのが1点でありますが、もう一つ重要なのは、男性側の働き方の問題にもなっております。男性が長時間働く、そしてその部分が女性の子育てにしわ寄せになっているという課題がありますので、男性の働き方にチェックというんでしょうか、焦点を当てた取組をやっていこうと思っているところでございます。とりあえずは男性に2週間以上の育児休暇を取得していただく運動というものを展開する中で、まずこの働き方を変えていくという、そんなふうにやっていこうと思っています。

 とりあえずは、モデル企業100社を募って、そこで実態を変えていくという取組を見せたいというふうに思っております。

浅野目義英委員 

 ありがとうございました。

 残時間8分になりましたので、最後の項目にいきたいと思いますけれども、いわゆる自主避難者ですね。強制の避難者と自主避難者があることは御案内だと思いますけれども、自主避難者は全国に3万6,000人と言われているんですね。知事御案内だと思います。この自主避難者という方は、そのゾーンから強制的な避難ゾーン以外のところに住宅の供与などを受けて各地に張り付いているという現状がございます。

 さて、昨年、2015年6月15日に知事が記者会見をして、福島県が住宅供与を2017年3月で打ち切ると発表しました。この住宅供与というのは、自主避難者に対するほとんど唯一の支援だったわけなんですね。皆さん既に認識をされていると思いますが、住まいというのは生活の基盤ですから、私はこの人たちを不利益にしてはいけないというふうに思います。この不利益にしない具体的な生活支援について、埼玉県のトップとして県内自主避難者に対する政策について答弁をしてください。

◎知事 

 福島県知事とはしばしば会ったり、あるいはまた電話などで連絡をしているところでありますが、基本的には福島県の立場は、人口減になってしまうので基本的に皆さん戻っていただきたい、その体制はとっているので、そちらのほうに来ていただきたいという立場が基本にあります。しかし一方では、自主避難者の皆さんたちもそれぞれの地域で定着されたりしていて、必ずしも帰還をするということについて積極的でない方々もおられます。

 県にも県営住宅とか県が提供しています民間賃貸住宅に現在216世帯、把握しているところであります。この方たちの意向調査も、福島県の御意向もあり一緒に調査をしているところです。郵送で意向調査をして、そしてまた福島県の依頼もありますので、5月からそうした意向調査を受けた上で戸別訪問をしながら、本当のお気持ちをどこまで確認できるかということについてはなかなか難しいかもしれませんが、丁寧に避難者の御意向を聞きながら、どうした形で支援すればいいかを決めていきたいと思っておりますが、平成28年、29年以降も県営住宅に住み続けたいという方があれば、当然それは福島県の意向とは関係なく、県としてきちっと用意をするという立場に立っていたところでございます。

浅野目義英委員 

 今の県内の自主避難者の数なんですけれども、ちょっと世帯数でもう一回確認したいんですけれども、お願いします。

◎知事 

 県営住宅や県が提供している民間賃貸住宅の場合でありますが、216世帯でございます。

浅野目義英委員 

 これは究極のちょっと質問になると思うんですけれども、自主避難をせざるを得なくなってしまった人たちに加えられた責任ってどこにあるんでしょうか。

◎知事 

 なかなか難しい話でありますが、基本的には原発事故が基本にあるわけでありますから、原発事故の責任者であります東京電力、そして間接的にはそうした体制のチェックが十分できなかった国や国の関係機関にも何らかの形で責任がある、このように思わざるを得ません。

浅野目義英委員 

 自主避難者の立場になれば、自主避難者は全く悪くないんですよね。知事お話しのとおりです。原発事故による被曝にはメリットが一つもないんですよ。福島県知事の発言をひもとかれていましたけれども、戻ってきてほしい、つまり帰還してほしいということです。しかし、帰還しただけでは生活ができませんから、そこで自立しなければいけないんです。帰還して自立をする。しかし、帰還をしても自立ができないと考える人たちが自主避難として県内に張り付く可能性が高いです。

 最後にしますけれども、この自主避難者の方々が望むのは、今知事が述べられた意向調査による対策が何よりですが、事故の被害者としての明確な扱いだと思います。好んで避難しているわけではありません。あなたはもう避難する必要がないから戻ってきなさいと言われて、自主避難者の方々の心の中にその納得に落とし込むことができるかどうかというのは大いなる疑問です。この被害者としての明確な扱いを、そして不利益にしないという視点からの知事の考えを述べてください。

◎知事 

 なかなか難しい答弁でありますが、一義的には福島県が何らかの形で責任を、責任をというんではなくて、こうした自主避難者も含めて県民として最良の選択ができるような枠組みを作っていくことが大事だと思っております。そういう意味では、平成29年以降になってくると、家賃補助とかが少なくなっていって、早く戻ってこいというようなインセンティブを仕掛けておられるところなどは、なかなか自主避難者にとっては悩ましい話かなというふうに私は思っております。

 この辺は、また埼玉県の立場で物が言えるのかどうか分かりませんが、意向調査をした上で、意見が言える状況であれば意見を申し上げてもいい、こんなふうに思いますし、それから、埼玉県とすれば、埼玉県に残った人たちに関して言えば、意向調査の上、残るということが明確な方々に関しては、県営住宅などの提供については最大限に配慮をしていく、これが基本だというふうに思っております。