第1回埼玉県調理師会大会の開催まことにおめでとうございます。また、調理師会のみなさまには常日頃何かとお世話になり、深く感謝申し上げております。
さて、「“忘れられない味”がありますか?これまで一番おいしいと感じたあなたの料理を教えてください」というテレビ番組を見たことがあります。全国の7歳から100歳近い方までの視聴者から寄せられたお便りで、番組は組み立てられて行きました。
それぞれの便りには、何年たっても絶対に色あせない思い出の味が披露されていました。
その一通一通は、料理をつくる調理師さんと食べる人、それぞれのお互いの気持ちが共鳴し合って生まれる、何ものにも代え難い物語でした。
小さいころ、家族で食べた定食屋のチキンカレー。という人もいました。
お嫁にいく前に娘と食べに行った時のお寿司。小さいことからの様々なことが思い出された。というお父さんもいました。
家族そろって食べたラーメン。自分や兄弟が就職で家を出る前の、最後の外食でした。という人もいました。
レストランのランチコース。久しぶりで会った母が食べさせてくれた。年老いた母をちらちら見ながら少し泣いて食べた肉がおいしかった。という人もいました。
行きつけのあの店のとっておきの味。私にとって何より大切な味です。という人も大変多かったように憶えています。
辛い時に元気づけられた大皿料理、大切な人と幸せを育んだ食卓、楽しくてたまらなかった仲間で囲んだ料理。力づけられたり支えられたりした家族との味。
料理の存在とともに人生には、様々なドラマが積み重なっていくのだなあと改めて思わせていただきました。
埼玉県調理師会のみなさま。これからも、私たちに“忘れない味”をどうぞ提供していただけますように、お願い申し上げます。
私たちは、その味を舌で覚えるだけでなく、心に刻み、人生の思い出として残していきます。
熟成と前進を繰り返されてきた埼玉県調理師会のますますのご発展を、心から祈り上げております。