友達と書店からの帰り。前から風変わりな男の人が近づいてきた。

「恵まれない青少年のために、この花を買ってください」

「なるほど」と納得し、財布をだして「いくらですか」と聞くと「五百円です」。
一輪の花が、五百円とは。僕の心は驚きに満ちあふれた。
しかし、恵まれない青少年の苦しみは一人の学生として知っている。
少しでも協力しようと思い、驚きの心を隠して
「花はいりませんから、これをとっておいて下さい」と、五十円差し出した。

ところが返ってきた言葉は「それなら協力金として三百円出して下さい」。
僕の心はあっけにとられた。「なぜ五十円ではいけないのですか」と抵抗したがムダだった。
あの活動員は「チリも積もれば山となる」ことの本当の意味を知らなかったのだろう。

一人一人が一円ずつだしても五百人の善意が集まれば五百円になる。
愛ある福祉が叫ばれている中で、こんな無情な花売りが横行するとは。まったく哀しい出来事だった。