本誌の園山俊二氏の四コママンガ「ぺえすけ」に、僕はふっと笑わされ、はっと胸を突かれ涙を流した。

一コマ目。おばあさんが縁側でペエスケに「これが火消し道具」と、
柄の長いほうきのようなものをみせる。

二コマ目。「これが防空ずきん」とかぶってみせながら、
おばあさんは、戦争中の用具の説明を続ける。

三コマ目。「これが戦死した息子の」とおばあさんは、海軍少年兵の帽子をもってやってくる。

四コマ目。それをペエスケの頭にのせるや、おばあさんは泣き崩れるのである。
おじいさんがやってきていう。「だから、あのころの物は、ひっぱり出すなって言ったろうが」━。

いまは、ビルが立ち並んだし、車も多くなった。すべての面で、この国は大きく変容した。
けれど、あの戦争で、なによりも大切な多くの人を失った。
全国に何十万といるペエスケのおばあさんたちは、胸を痛くして、今年の夏を迎えたに違いない。
自衛隊員は十八万人にもなった。青森ナイキ基地、機雷敷設飛行隊など、
今年に入ってからの防衛庁の計画はすさまじい。

おばあさんが涙を流す大切だった人々の死は、果たしてムダだったのだろうか。
終戦三十四年目。ペエスケのおばあさんを、もう泣かせてはいけない。
せめて五コマ目では、帽子を取り出して「息子よ、この国は平和になったよ」━そういわせてみたい。